1 個人事業と会社企業の割合
日本では全企業者数421万あるのですが、個人事業 36%(151万事業者)に対して会社企業は 64%(270万社)です。
どうして事業者は、事業を会社企業として運営するのか?を考えてみましょう。
2 事業を始めるときに考えること
① 事業資金は、ほぼ個人資金で賄えるか?
共同出資者からの出資、金融機関からの借り入れが必要な場合は
会社設立が有利と言えます。
個人一人では作れない資金を、共同出資という形で集める、
個人では借り入れが難しい場合でも、会社という信用で、借り入れできる
可能性が大幅にアップします。
② 事業経営は個人のノウハウ、知識のみでできるか?
事業経営に必要なノウハウや知識がない場合には、
共同出資者や従業員が必要になります。
この場合に会社設立が必要か、または有利と言えます。
③ 事業拡大を望むのか?
この観点からは、事業拡大には一般的に会社設立が有利です。
(資金融資を受けやすい、人材の確保がしやすいなど、詳細は次項目で。)
④ 事業内容が、個人企業でも問題なくできるか?
会社設立をしないと許認可が下りず、
そもそも事業を開始できない場合があります。
3 会社設立のメリット
【メリット1】 対外的な信用が増大する
会社は商号・目的・代表者・資本金・役員などが登記されますので、
一般的に個人事業主よりも信用を得られます。
もともと登記というのは、取引の相手に信用を与えるためになされるものだからです。
とくに大企業などは、仮に実績があっても、登記されていない個人事業者へ
仕事を発注しないこともよくあることです。
【メリット2】 節税面でのメリットが大きい
法人税は、利益が増えても、原則『一定税率』なのに対して、
個人事業では所得が増えるほど税率が高くなる『累進課税』で課税されます。
ですから、売り上げが大きい場合は、法人税の方が有利になります。
A 経費の幅が増える
個人事業の場合は、家計用と事業用の線引きがどうしてもあいまいになりますから、
事業用として必要経費に認められる費用が小さくなります。
反対に、会社の経費は原則として、すべて事業活動費のために支出されたもの
とみるという前提があるので、
●自宅兼事務所、●自動車、●生命保険料、退職金など、法人にした方が
経費として認められる幅が大きくなります。
B 欠損金を9年間、繰り越しできる
ある年度で損失が出た場合、その損失を翌年以降の所得と相殺できます。
これを、欠損金の繰越控除といいます。
個人事業の場合、純損失の繰越しは年間しかできませんが、
法人の場合、青色欠損金を9年間繰越すことができます。
個人事業では、原則として家族に給与を支払えません。
(青色専従者給与として、税務署に届出をした場合にのみ、認められています。)
法人はこういう制限がないので、実際に事業に従事していたら、労働の対価として
認められる金額を、家族に給与として支払うことが出来ます。
これによって所得分散をして、経営者の所得税、住民税を節税することができます。
C 家族への給与
個人事業では、原則として家族に給与を支払えません。
(青色専従者給与として、税務署に届出をした場合にのみ、認められています。)
法人はこういう制限がないので、実際に事業に従事していたら、労働の対価として
認められる金額を、家族に給与として支払うことが出来ます。
これによって、所得分散をして、経営者の所得税、住民税を節税することができます。
【メリット3】 資金調達が楽になる
事業活動にとって、資金が不足する、というのは倒産することを意味します。
資金が必要な時に、金融機関からの融資交渉で、個人事業は融資条件がかなり厳し
くなります。
★個人の場合、家計と事業の区別が曖昧ですし、基本的に貸借対照表の添付が
免除されているために、金融機関は審査の際に、どれだけ貸したら大丈夫なのかを
判断できないので、融資条件が厳しくなり、多くの場合、保証人を要求されます。
⇓
法人の場合は、財産管理が厳格で、損益計算書と貸借対照表が作成されますから、
金融機関も客観的に融資判断ができるので、広く資金調達できる可能性が広がります。
【メリット4】 優秀な人材が集まりやすい
みなさんも経験されている方も多いと思いますが、
世の中の雇用が不安定になっているので、安定的な雇用を求める人が多くなっています。
多くの人が、個人事業のもとで働くより、会社の正社員で働きたいと思っています。
【メリット5】 決算日を自由に設定できる
個人事業では事業年度は1月~12月になっていますが、
法人の場合は、決算日を自由に決めることができます。
業務の繁忙期と決算事務が重ならないようにできるので、年間を通じて、
業務を平均化することが出来ます。
【メリット6】 事業承継がしやすい
個人事業では、事業主が死亡して相続が発生すると、個人の名義が一時的に
凍結されて、支払いが困難になったり、事業に支障が生じます。
法人化すれば、代表者の死亡によって、会社の口座が凍結されたり、
会社の財産が相続の対象になったりすることはないので、事業がストップしたり
することはありません。
【メリット7】 個人資産が差押を受けない
個人事業に場合は、借入金・仕入先への未払いなど、当然ですが、全部、
事業主が返済しなければなりません。
法人の場合は、出資の範囲内の責任に留まりますので、
会社が破産しても個人に返済義務はありません。
4 会社設立のデメリット
デメリット1 会社の設立に、時間とコストがかかる
あとで説明しますが、会社設立には、定款認証、登記申請など時間と費用がかかります。
資本金1円であっても、設立には登記が必要なので、定款に貼る印紙代40000円、
定款認証費用52000円、登録免許税150000円がかかります。
また、たとえ赤字であっても、法人住民税の均等割りで最低でも70000円かかります。
デメリット2 社会保険へ加入することが義務付けられている点
たとえば所得が毎月40万円であった場合、
個人事業の場合は、国民健康保険料約50000円、国民年金保険料は15000円で
毎月65000円ですが、
会社の場合は、健康保険料は約38000円、厚生年金保険料は約65000円で、
毎月102000円となります。
デメリット3 事務負担の増加
税金の申告、社会保険や労働保険の手続きなどの事務負担が大きくなります。
デメリット4 会社のお金を自由に使えない
個人事業の場合、事業で得たお金は自由に使うことが出来ますが
会社では会社財産と個人の財産は明確に区別されるので、
社長といえど自由にお金を自分のために使うことはできません。
こういうときには、社長と会社の間で金銭消費退職契約書を交わさなければなりません。
3 まとめ
会社企業にしたほうが、断然有利 !!
小さく個人事業で始めて、事業が大きくなれば会社(法人)へ、という考え方も
ありますが、そもそも事業を拡大するためには、公的融資を受けやすく、また
大手の企業との取引もしやすく、優秀な人材を確保しやすいなど、絶対に会社
にしたほうが有利です。
節税面だけを見ると、年間利益が500万円を超える場合に会社にしたほうが
得になるといえますが、事業の拡大を考え、はやく収益500万円以上にする
ためには、会社(法人)として事業を運営する方が良さそうです。